新発見 東かがわ市・さぬき市の歴史10 ~春日神社(さぬき市寒川町神前)の鬼瓦~
寒川町神前の春日温泉の南側に春日神社があります。神前は鎌倉時代に奈良県の興福寺の領地でした。春日神社はこの頃に奈良県の春日大社より勧請されたと考えられる由緒ある神社です(奈良県の興福寺、春日大社はそれぞれ藤原家の氏寺、氏神でした)。
春日神社の現在の本殿は平成25年に改築されました。今回は改築前に現役であった鬼瓦2点について紹介します。
2点の鬼瓦は屋根の両サイドにあったものですが、大きさ、色(焼成)、形(モチーフ)がわずかながら異なっています。一見、製作された時代が違うようにも見えますが、2点ともに下端面に銘文が刻まれており、同年に同じ瓦工によって製作されたことが分かります。
製作年は弘化3年(1846年)の江戸時代後期です。製作月は6月と7月で1か月の差があります。製作者は一方には山のマークの下に「利」、もう一方には「富中村宮内 瓦工利吉」と刻まれています。富中村宮内とは瓦工のいた場所で富田中村宮内、現在の大川町富田中宮内になります。つまり、春日神社の鬼瓦は大川町富田中宮内にいた瓦工利吉によって製作され奉納されたことが分かります。春日神社鬼瓦は江戸時代後期の年代と、瓦工の特定できる貴重な資料といえます。
春日神社には春日神社建替に際しての供物の割り当てを記した長さ約2mの木板が保存されています。この中にも「中村宮内、利吉」の名が赤飯1折を奉納した人物として書かれています。利吉は鬼瓦を奉納したのみならず深く春日神社の本殿建替えの行事に関わっていたことがうかがえます。
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